AIで「なくなる仕事」は、もう職種名では読めない。Skills-Firstで変わるキャリアの見方

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AIで「なくなる仕事」は、もう職種名では読めない。Skills-Firstで変わるキャリアの見方

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published : 2026/9/17

AIで仕事の境界が変わる今、職種名や経験年数だけでは見えない力をどう見つけ、次の仕事へ翻訳していくのかを考えます。


AIで「なくなる仕事」は、もう職種名では読めない。Skills-Firstで変わるキャリアの見方

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AIで「なくなる仕事」は、もう職種名では読めない。Skills-Firstで変わるキャリアの見方

「AIでなくなる仕事」「AIに奪われにくい職業」。そんな予測を目にする機会が増えました。

けれど、2026年に公表された労働市場の調査を見ていると、そもそも「どの職業が残るか」を職種名だけで予測すること自体が難しくなっているようです。

2026年4月、ILO(国際労働機関)は、AIによる職業への影響を示す「AI曝露度」について、将来の失業や雇用減少をそのまま予測する指標として読むべきではないと注意を促しました。AIが技術的にできることと、企業が実際にAIへ置き換えることは同じではないからです。導入コスト、需要、企業の判断、仕事そのものの再設計によって結果は変わります。(International Labour Organization)

しかも、AIの影響を受けやすい仕事は、かつて想定されていた「単純な反復作業」だけではありません。現在のAI能力を基準にすると、ビジネス、金融、IT、数学、教育など、認知・分析を多く使う職業も高い曝露を示しています。さらに、高曝露の職業は共通するスキルや実際のキャリア移動を通じて多くの仕事とつながっており、一つの仕事の変化が隣接する仕事にも波及する可能性があります。(International Labour Organization)

8月にILOが公表した報告でも、AI導入によって、認知能力、社会情動的能力、デジタルスキルなどの組み合わせそのものが変化し、AIリテラシーだけでなく、適応力、レジリエンス、人間自身が判断し行動する力が重要になるとされています。(International Labour Organization)

さらに9月16日、世界経済フォーラムは、若手労働者の3人に1人以上がAIによる変化への曝露が中程度から高い職業に就いており、企業が求める能力の組み合わせも変わっていると報告しました。(World Economic Forum)

つまり、問うべきなのは「この職業は残るのか」だけではなくなってきています。

仕事の中身が変わったとき、自分が持っているものを次の仕事へどう移せるのか。

この問いの方が、これからのキャリアを考えるうえで重要になってくるのかもしれません。

work-and-place神戸北野 AIが変えているのは、仕事の有無だけではなく、職業同士の境界や必要とされる能力の組み合わせでもあります。

「職種」ではなく「Skills」から人と仕事を見る

この変化と重なるように、2026年6月、OECDは104ページの報告書『A Skills-First Labour Market』を公表しました。(OECD)

Skills-Firstとは、学歴や肩書、過去の職種だけを入口にするのではなく、「その人が実際にどんな能力を持っているのか」を軸に、人と仕事を結び直そうとする考え方です。

OECDが今回論じているのは、単に個人に「ポータブルスキルを身につけましょう」と勧めることではありません。採用、キャリア支援、人材育成、職業情報など、労働市場の仕組み自体を、よりスキルを基準に機能するものへ変えていくという話です。(OECD)

ポータブルスキルが重要だという話そのものは、以前からあります。

今回興味深いのは、個人が持ち運べる能力を身につけるという話から、社会の側が「職種名の奥にある能力」を読み取れる仕組みへ変わろうとしていることです。

OECDは、職業と能力を結びつける共通の「skills language」の必要性も指摘しています。日本の厚生労働省の「job tag」も、職業とスキルを結びつける仕組みの一例として紹介されています。(OECD)

さらに、自分が持っている能力を採用側に見える形で伝えることを、OECDは Skills Signalling と呼んでいます。ニュージーランドのキャリア支援では、本人が持つtransferable skillsを見つけ、新しい役割でどう活かせるかを整理し、履歴書や応募書類へつなげる支援も行われています。(OECD)

ここまでくると、「スキルアップ」という言葉だけでは少し足りません。

これまでの経験を分解し、別の仕事でも意味が通じる形へ変換する。

言ってみれば、「経験の翻訳」が必要になっているのだと思います。

「営業をしてきたから、次も営業」に感じていた違和感

今回の動きを見ていて、私が20代の頃からキャリア支援の中で感じていた違和感を思い出しました。

「営業をしてきたから、次も営業」。

「事務をしてきたから、次も事務」。

過去に就いていた職種が、そのまま次の仕事の選択肢になることに、以前から違和感がありました。

もちろん、同じ仕事を経験していることには価値があります。営業経験者なら顧客との商談を知っている。経理経験者なら会計実務を理解している。企業側にとっても、同じ職種を経験している人の方が、採用後を想像しやすいでしょう。

実際、現在の採用でも職務経験は強く重視されています。OECDが紹介する世界経済フォーラムのデータでは、2025~2030年の採用について、約8割の企業が職務経験を重視すると回答しています。(OECD)

ただ、同じ「営業10年」でも、その10年間で何をしてきたのかは人によってかなり違います。

新規顧客を開拓することに強かった人もいれば、既存顧客との関係を深めてきた人もいます。顧客自身もうまく説明できない課題を整理することが得意な人もいれば、社内外の関係者を巻き込み、難しい案件を最後まで動かすことに強い人もいます。

履歴書には、全員「営業経験10年」と書かれるかもしれません。

でも、その人たちが実際に使ってきた能力も、仕事への関わり方も同じではありません。

「営業経験10年」を一度ばらしてみる

例えば「営業経験10年」を、職種名ではなく、その仕事の中で使ってきた能力へ分解してみます。

  • 相手の話を整理する
  • 曖昧なニーズを言語化する
  • 複数の利害を調整する
  • 相手に伝わるように説明を組み立てる
  • 周囲を巻き込み、物事を最後まで動かす

こうして見ると、営業以外でも使えそうなものが含まれています。

顧客の曖昧な要望を整理する力なら、企画やカスタマーサクセス、採用、コンサルティングでも使えるかもしれません。利害を調整しながら物事を進める力なら、プロジェクトマネジメントにもつながります。複雑な内容を整理して相手に伝える力なら、広報や教育など別の領域で発揮される可能性もあります。

つまり、

「何職だったか」ではなく、「その仕事の中で何を繰り返しやってきたのか」。

見る単位を変えると、同じ経歴からでも違うキャリアの可能性が見えてきます。

画像2 「営業経験10年」という一つの職種名を分解すると、別の仕事へつながる能力がいくつも見えてきます。

もう一つ見るのは、「その人が仕事にどう関わってきたか」

実際のキャリア相談では、職種名だけで次の仕事を考えるのではなく、その人がどんな経験をし、どんな状況で力を発揮してきたのかを見るようにしてきました。

そこから、「この経験は別の仕事でも使えるのではないか」と考える。

自己PR文も、過去の仕事内容を並べるだけではなく、そこで何を考え、何をし、どんな力を使ってきたのかが伝わるようにブラッシュアップする。本人が最初は考えていなかった職種まで、職業選択の幅を広げることもありました。

知人の会社の採用について相談を受けたときにも、募集職種にその人をそのまま当てはめるのではなく、「この人を採用した方がいいのではないか」「今想定している仕事より、こちらの役割の方が力を発揮するのではないか」と提案することがありました。

そのときに見ていたのも、「今、その仕事ができるか」だけではありません。

これまでどんな経験をしてきたのか。どんな状況で力を発揮してきたのか。そして、仕事にどのように関わってきたのか。

与えられた仕事を正確に進めることに強いのか。

自分で課題を見つけ、動き始めるのか。

周囲を巻き込みながら進めるのか。

難しい状況になったとき、どう対応してきたのか。

最後まで責任を持って物事を進めるのか。

同じ職種、同じ経験年数でも、この「仕事への関わり方」はかなり違います。

私はそこも、その人が別の役割で力を発揮できるかを見る手がかりの一つにしています。

さらに、仕事側についても同じように考えます。

会社が募集している職種名ではなく、本当は何をしてくれる人を必要としているのか。

まだ経験したことのない領域でも、その人の経験、能力、仕事への関わり方から考えて、力を発揮できそうな部分はないか。

職種名ではなく、経験を分解し、能力と仕事への関わり方まで見ながら、別の仕事で使える可能性を探す。

これは最近考え始めたことではなく、以前からキャリア支援の中で意識してきた見方です。

そして今、Skills-FirstやSkills Signallingという言葉で、人を職種や肩書だけではなく、その人が持っている能力から見るという議論が、労働市場全体でも強くなってきています。

「経験職種」から「経験の翻訳」へ

これからのキャリア支援では、「あなたに向いている職業は○○です」と職業を当てることより、その人が持っているものを別の仕事でも理解できる形へ翻訳することが、より重要になるのではないでしょうか。

例えば、「営業を何年間しましたか」で終わるのではなく、難しい顧客に対応したとき何をしたのか。仕事が止まりそうになったときどう動いたのか。周囲の人が困ったとき、どんな役割を担うことが多かったのか。自分が関わることで何が変わったのか、と経験を掘り下げていく。

さらに、「何ができたか」だけではなく、どのようなスタンスで仕事に関わり、どう周囲と関係をつくり、どう物事を前へ進めたのかまで見る。

すると、職種名だけでは見えなかったものが出てきます。

そこから、

経験 → 能力・仕事への関わり方 → 別の仕事での使い道

へ翻訳する。

AIによって仕事の内容そのものが変わり続けるのであれば、この翻訳ができるかどうかで、キャリアの選択肢はかなり変わってくるのではないでしょうか。

画像3

職種名だけではなく、経験と「仕事への関わり方」まで分解すると、別の仕事へつながる可能性が見えてきます。

今行っているキャリア講座も、「経験を翻訳する練習」

現在行っているキャリア講座では、自分のスキルや経験を棚卸しして、プロフィール文や自己PRをつくるワークを行っています。

表面的には、「自分を上手に紹介する文章を書く講座」に見えるかもしれません。

でも、大切にしているのは文章をきれいにすることだけではありません。

自分がこれまでやってきたことを分解する。

そこでどんな能力を使ってきたのかを探す。

どんな関わり方で仕事をしてきたのかを振り返る。

そして求人票を読み、企業側が本当に必要としているものを考える。

そのうえで、

「自分のこの経験は、あなたが必要としているこの仕事で使える」

と、相手が理解できる言葉へ変えていきます。

これは、OECDがSkills Signallingと呼んでいる考え方とも重なります。能力を持っているだけではなく、それを採用する側から見える形にして伝えることです。(OECD)

例えば、求人票に「コミュニケーション能力のある人」と書かれていたとしても、「私はコミュニケーション能力があります」と書くだけでは、ほとんど何も伝わりません。

顧客の曖昧な要望を整理した経験なのか。対立する部署の意見を調整した経験なのか。初対面の相手から必要な情報を引き出した経験なのか。

同じ「コミュニケーション能力」でも、実際に仕事で何をしてきたかは違います。

だから、自分の経験を分解し、別の場でも使えるものを見つけ、相手が必要としている仕事へ翻訳する。

プロフィール文や自己PRをつくることは、その練習にもなると考えています。

画像4

自己PRは、自分を良く見せる文章ではなく、自分の経験と相手が必要としている仕事をつなぐ「翻訳」にもなります。※イメージ画像です

ただし、能力は本当に別の仕事でも再現されるのか

ここには、大きな反論があります。

職種ではなく能力を見ると言っても、その能力が別の会社や別の仕事でも、本当に同じように発揮されるとは限りません。

ある会社で非常に成果を出していた営業担当者が、別の会社へ行ったら同じ結果を出せないこともあります。

以前の商品そのものに競争力があったのかもしれません。

会社のブランドが商談を助けていたのかもしれません。

すでに築かれていた顧客関係があったのかもしれません。

優秀な上司やチームに支えられていた可能性もあります。

「その人自身が持っている能力」と「その環境だから発揮できた成果」を、簡単に切り分けることはできません。

仕事への関わり方についても同じです。

ある会社では自分で課題を見つけて動いていた人が、別の組織でも同じように動けるとは限りません。裁量の大きさ、上司との関係、組織文化、チーム構成によって、人の行動は変わります。

さらに、別の場でも使える能力があるからといって、すべての職業へ移れるわけでもありません。

医師や弁護士など資格が必要な仕事はもちろん、エンジニア、研究、経理・財務など、専門知識や実務経験そのものが大きな意味を持つ仕事があります。

Skills-Firstは、「学歴も専門経験も不要になる」という話ではありません。実際、OECDの報告でも、現在の採用では職務経験や大学の学位が依然として広く使われています。(OECD)

だから必要なのは、

専門性、経験、環境、その人が持つ能力、そして仕事への関わり方を、分けながら見ること。

ここが、最も難しく、同時に面白いところなのだと思います。

Skills-Firstになれば、人の可能性をもっと正確に見られるのか

AIによって、仕事を構成するタスクはこれからも変わっていくでしょう。

ILOが指摘するように、AIへの曝露が高いからといって、その職業がそのままなくなるとは限りません。逆に、その仕事自体が残っても、中身が大きく変わる可能性があります。(International Labour Organization)

そう考えると、キャリア支援で問うことも少し変わってきます。

「あなたは何職ですか」だけではなく、「その仕事の中で何をしてきましたか」。

「何年経験しましたか」だけではなく、「その経験の中で、何ができるようになりましたか」。

さらに、

「どんなふうに仕事に関わってきましたか」。

「環境が変わっても、その力は使えそうですか」。

という問いも必要になります。

ここには、まだ分からないことがたくさんあります。

一つの仕事で発揮した能力や仕事への関わり方は、どこまで別の仕事でも再現できるのでしょうか。

どこまでが本人の力で、どこからが環境によるものなのか。

職種名を外して経験を分解すれば、今まで見えていなかったキャリアチェンジの可能性を、本当に見つけられるのか。

AIによって仕事の境界が動き始めた今だからこそ、この問いをもう少し深く追ってみたいと思っています。

「なくならない仕事」を当てることよりも、変化したときに、自分の経験をどう次へ翻訳できるか。

これからのキャリア支援では、その人の能力だけでなく、その人が仕事にどう関わってきたのかまで含めて見つけていくことが、これまで以上に重要になるのかもしれません。

参考資料

International Labour Organization「Workers’ exposure to AI: What indicators tell us – and what they don’t」(2026年4月17日) (International Labour Organization)

OECD「A Skills-First Labour Market」(2026年6月18日) (OECD)

International Labour Organization「Changing landscape of skills in the age of AI」(2026年8月13日) (International Labour Organization)

World Economic Forum「What skills do employers want from young people entering the workforce in the age of AI?」(2026年9月16日) (World Economic Forum)

※本記事では、AIと労働市場、Skills-Firstに関する最新の報告をもとに、筆者自身のキャリア支援経験から考察しています。職種を超えて能力や仕事への関わり方がどこまで再現されるかについては、個人、専門性、企業、組織環境などによって異なり、現時点で単純に一般化できるものではありません。

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