陸上養殖が水産危機を救う?!団地で魚が獲れる未来

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陸上養殖が水産危機を救う?!団地で魚が獲れる未来

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published : 2022/12/15

大手企業が続々と参入している『陸上養殖』をご紹介します。海洋資源の保護や環境保全にも一役買うかもしれません。神戸でも一風変わった場所での陸上養殖が始まりました。水産危機を救うヒントがここにありそうです。


陸上養殖が水産危機を救う?!団地で魚が獲れる未来

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こんにちは、work and placeです。今回は最近話題の『陸上養殖』のお話です。

世界の人口増加や気候変動による食料危機が叫ばれて随分経ちます。特に食糧自給率の低い日本にとって非常に緊急性の高い課題と言えます。農作物や畜産物は勿論の事ですが、水産資源も例外ではありません。水産資源への需要が高まっている反面、乱獲による資源枯渇への懸念が大きい上に、環境破壊や気候変動など問題は山積しています。

漁獲量を制限したり、環境保護をする事によって水産資源を保護する事も必要ではありますが、今注目があつまっているのが養殖です。水産物の養殖と言うと、関西では「近大マグロ」の名でお馴染みの近畿大学水産研究所が有名ですね。「獲る漁業からつくり育てる漁業」への転換を実現するべく、水産資源の増産と持続的利用を目的に養殖法の研究を続けています。

水産物の養殖は海辺で行うイメージが強いと思います。しかし養殖に使える海面養殖には限界がありますし、海洋汚染の問題もあります。そこで陸上の施設で人工的に水産物の養殖を行う『陸上養殖』のスタイルが広がりつつあります。

陸上養殖には主に2つの方法が存在します。1つ目はウナギの養殖等に使われているかけ流しと呼ばれる方法です。こちらは海や河川等の水を取水し排水する方式です。もう1つは閉鎖循環式と呼ばれるタイプです。こちらはろ過システムを使い、飼育する水を循環して繰り返し使用する養殖方法です。閉鎖循環式はランニングコストがかかるものの、環境に優しいと言われています。海洋汚染を引き起こさない事や、逆に汚染物質の混入を防げる等のメリットも大きいそうです。


今この『陸上養殖』に色々な企業が参入して、業界が活気づいています。まずご紹介したいのはJR西日本です。『水質に優れた自然由来の水にこだわり、適正な管理課で持続的に育てられる陸上養殖により、生産履歴の管理や各種検査を行い安心安全を担保している魚たちです。(説明文より抜粋)鳥取県の『お嬢サバ』や『白雪ひらめ』、広島県の『オイスターぼんぼん』や『とれ海老やん』等、ネーミングにもこだわった『プレミアムオーガニックフィッシュ』は地元との強いタッグを組み、着実にブランド化の道を進んでいます。

続いては関西電力です。関西電力は子会社を通じて静岡県に海老の陸上養殖場を設立したそうです。海老の数をAIで把握したり、掃除ロボットを導入する等の最先端の技術を導入しています。何と年間で80トンを生産するんだそうです。陸上養殖への参入が増加する中でも海老は比較的競合が少ないとされ、魚に比べると出荷までのサイクルが短い点に目をつけたそうです。


そしてもう一つご紹介したいのがUR都市機構です。滋賀県にある陸上養殖を手掛けるウィルステージとタッグを組み、何と団地で陸上養殖をする実験を始めたそうです。

神戸市垂水区にあるUR都市機構の「新多聞団地」で2022年11月より魚や海老の養殖が始まっています。団地で魚の養殖と言うと意外な感じもしますが、増えている空き住戸のスペースを有効活用するというだけではありません。そもそも団地の住戸は断熱性に優れています。屋外では天候に左右されやすいですが、住戸内であれば環境が安定しています。完全閉鎖循環式の水槽を使用しているので、大量に水を追加したり、排水の必要が無い事も導入しやすい要因だったと言えますね。

現在は平目やカワハギ、バナメイエビ等約1200匹を養殖しているんだそうです。現在は実験段階で、採算性等を含めて販売の可能性を模索しています。空き住戸の新しい活用法が食糧危機を回避する一つの手段になっていくかもしれませんね。


ランニングコストがかかる為、今のところ大手企業が参入する傾向が強い陸上養殖ですが、上記のUR都市機構の例で言えば、将来的に住民に業務を委託する可能性もあるそうです。農産物を屋内で栽培する例も増えてきていますし、もしかすると空き住戸の多い団地には色々な可能性が秘められているかもしれませんね。

いかがでしたか?陸上養殖が広がる事は食料自給率の低い日本にとって大きな転換になるかもしれません。ご紹介した以外にも沢山の企業が参入しつつある『陸上養殖』の世界は、大きな可能性を秘めています。今後の展開にも期待したいですね。団地で獲れたお魚が食卓に並ぶ日はそう遠くないかもしれません。それでは、また。

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