観光に関する経済回復への期待とオーバーツーリズム問題

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観光に関する経済回復への期待とオーバーツーリズム問題

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published : 2023/4/29

2023年ゴールデンウィーク!!数年振りの大きな出国ラッシュと共に、訪日外国人旅行者の数も大幅に増えて来ています。過剰な数の観光客、オーバーツーリズムに纏わる諸問題を取り上げたいと思います。観光需要による経済回復と、住民の生活環境保護の両立は叶うのでしょうか?


観光に関する経済回復への期待とオーバーツーリズム問題

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こんにちは、work and placeです。今日からゴールデンウィークに突入しましたね!最大で9連休になっているという方も多く、行動制限のない久々の大型連休に海外旅行の予定を入れている方もいらっしゃるかもしれませんね。29日に前倒しする形で入国者に対する水際対策も終了しました。成田国際空港や関西国際空港などでは予想を上回る出国ラッシュとなっています。

国内・海外を問わず、旅行に行くにあたってワクチン3回接種証明や陰性証明書の提示が必要となる事も多かったですが、今後は徐々に緩和されるものと思われます。(海外は特に渡航先によって異なる可能性が高いので、事前の確認が必要です。)

ワクチン未接種の方は無料PCR検査場を利用される事が多かったかと思いますが、2023年3月末をもって地方自治体主導による無料PCR・抗原定性検査事業は終了しています。民間の有料の検査事業は継続していますが、検査にかかる費用などはまちまちの様子です。5月8日に予定されている、新型コロナウィルス感染症の2類相当から5類への引き下げに伴い、大きく変更が生じる事は間違いありませんが、今回のゴールデンウィークに関しては多少の準備は必要なのかもしれませんね。旅行直前に慌てて問い合わせを行った方も多くいらしたようです。


さて、日本から海外に行く人ばかりではなく、水際対策の終了に伴い訪日外国人旅行者の数も大幅に増加しています。コロナ禍に激減した訪日外国人旅行者は、昨年度の時点でもかなりの回復を見せていました。昨年の数は一昨年の15倍以上となっていますが、今年はそれを更に上回ることは間違いないでしょう。とある民間のシンクタンクの試算によれば今年の訪日外国人旅行者は2000万人を超える見込みなんだそうです。昨年程ではないにしろ、円安の流れが続いている事も要因の一つだと考えられています。

コロナ禍以前に主に中国人観光客による「爆買い」という流れがありましたが、現在も円安を利用して買い物目的で訪日する旅行者は非常に多いと言われています。顕著な例として、買ったものが持参したスーツケースに入りきらず、訪日後にスーツケースを追加購入する人が多く存在します。そういえば、大阪・梅田に出ると大きなスーツケースを一人で複数個転がしている外国人の姿をよく見かけます。大型家電量販店などでもスーツケースのコーナーが大変賑わっています。


訪日外国人旅行者の数が増加し、冷え込んでいた経済が回復傾向に向かうのは素晴らしい事ですし、そこに大きな期待を抱く事業者の方も多いと思います。しかし、ここへ来て問題になっているのがオーバーツーリズムの問題です。

オーバーツーリズムとは、簡単に言えば観光客が過剰に増加する事で観光地に住む住民の日常生活や自然環境に悪影響を及ぼす事象の事です。ヨーロッパ等世界各地の観光地において大きな問題となっています。日本では観光公害という言い方をしますね。

具体例をあげると、人混み・交通渋滞やトイレの混雑といったインフラ関係のパンク、騒音やゴミ問題、環境破壊などです。本来、観光客が訪れる事は地域の経済活性化に繋がるという利点があるはずなのに、結果として地域住民にとっての不利益が生じたり、それらを原因とした地域住民と観光客とのトラブルが起きてしまうのは問題ですね。海外での実例として、スペイン・バルセロナでは住民たちによる反観光デモが起こっています。

日本でのオーバーツーリズムによる問題では、京都の例を挙げたいと思います。京都は言わずと知れた人気観光地です。特に春と秋、桜と紅葉のシーズンには国内外を問わず多くの観光客が訪れています。その時期は京都市民にとって貴重な足であるはずの市バスが、定員70名のところ140名が乗り込むという、とんでもない混雑ぶりになっているそうです。混雑緩和を目的としてバス1日乗車券を値上げし、地下鉄・バス1日乗車券を値下げするなど、交通機関分散化の取り組みが行われ、一定の効果は出ているようですが、根本的な問題を解決するには至っておらず、観光客の数を踏まえたインフラ整備や、住民への配慮は更に必要になるものだと考えられます。

京都の有名なお祭りの一つ「祇園祭」では、以前は「山鉾巡行は観光客、宵山は市民と」という棲み分けができていました。ところが観光客があまりに殺到する為、地元住民の足が祇園祭から遠のいてしまうという残念な状況になっているんだそうです。

そしてオーバーツーリズムによって、せっかく来た観光客の満足度が下がってしまう現象も起きています。混雑していて楽しめなかった、観光地がゴミだらけだったなど、満足度が下がれば結局観光事業そのものにも悪影響を与えてしまいますね。

2018年7月には観光庁が「持続可能な観光推進本部」を設立しました。単に観光客の数を制限したり、地域住民に我慢を強いる事なく、上手に共存できれば素晴らしい事だと思います。観光客の来訪で経済的に潤う事はとても大切ですが、かと言って地域住民の日々の生活を犠牲にする事はあってはならない事だと思います。京都だけではなく、全国の観光地に課せられた問題ですが、工夫を重ねて観光客の満足度を高め、経済を活性化する事と並行して、地域住民の暮らしやすさも実現していきたいですね。それでは、また。

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