「南部鉄器工房及富」 伝統文化と遊び心溢れるデザインの融合

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「南部鉄器工房及富」 伝統文化と遊び心溢れるデザインの融合

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published : 2021/10/6

老舗の工房『南部鉄器工房及富』をご紹介します。伝統と新しさ、デザイン性と実用性を兼ね備えた美しい製品の数々を是非ご覧ください。


「南部鉄器工房及富」 伝統文化と遊び心溢れるデザインの融合

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こんにちは、work and placeです。

日本には古くから受け継がれて来た伝統工芸品が沢山あります。その中で今回ご紹介したいのは南部鉄器の老舗工房です。南部鉄器とは岩手県南部鉄器協同組合連合会の加盟業者によって作られている鉄器です。南部鉄器と総称されていますが水沢の南部鉄器と盛岡の南部鉄器の歴史は異なるそうです。

今回私がご紹介したいのは南部鉄器工房及富です。岩手県奥州市水沢に工房を持つ及富は、1848年に及川富之進さんが創業され、170年以上の歴史を持ちます。

そもそも鉄は、熱を加えると柔らかくなりやがて溶けますし、冷えると再び固まります。叩くと固くなりますし、強度も高いです。鋳造・鍛造・圧延等、様々な加工に適し加工性に優れた素材だと言えます。

その鉄を使って鉄瓶や急須の他、鉄鍋や鍋敷き、鉄分補給に便利な鉄玉と色々な鉄器を生み出しています。意外な商品としては、何とアナログレコード専用のスタビライザーがありました!(スタビライザー:機械振幅を抑え安定化させる装置の事。)そして季節商品ではありますが、アマビエや果物を模したデザインの風鈴がとても素敵でした。

南部鉄器と言うと、古き良き伝統のイメージが強いかもしれませんが、決して魅力はそれだけではありません。見た目の美しさだけではなく、実用面からも愛されています。茶道のお道具等、高尚で特別な存在のものも勿論ありますが、むしろ昔から身近な存在として日常使いしている人も少なくありません。高級なお茶を入れるとかそういう事ではなく、それこそ鉄瓶で沸かしたお湯でコーヒーを淹れたり、カップラーメンを作ったりする事もあるんだとか!そういった日常生活に根付いたものだからこそ、今なお愛され続けてているのかもしれません。鉄分補給の為と鉄瓶を利用してお白湯を作ると、その美味しさにも驚くそうです。

『鉄瓶はお手入れが大変なのでは?』と心配される事もあるそうですが、実はとても簡単との事。強いて言えば毎日使う事が一番のお手入れなんだそうです。注意としては空焚きしない事。鉄瓶は丸洗いせず、乾いた布で水分を拭き取る程度で大丈夫なんだそうです。『鉄瓶を育てる』という言い回しがあります。日々使用してくいく内に湯垢をつけていくのが良いそうです。長年じっくり使う事で自分の鉄瓶を育てて行くというのは素敵な考え方だと思います。

そして実際長く使える事も大きな魅力の一つだと言えます。残念ながらあらゆる物において使い捨ての感覚が当たり前の様になっている現代だからこそ、孫の代まで使えるというのは素晴らしい事ですよね。イマドキのSDGsの観点だけではなく、日常生活の一旦が伝統文化継承にも繫がります。実際のところ、工房のコンロにかけられている現役の鉄瓶は60年以上愛用されているものなのだとか。

伝統文化でありながら日常生活に根差す身近な存在でもあるというのはとても貴重な事だと思いますし、大切にしていきたいですね。


筆者は以前から南部鉄器に興味を持っていましたが、SNSをきっかけに及富の南部鉄器を知る事ができました。最初は数年前に作られたというパステルカラーのタイプとの出会いで画像を見た瞬間、正直度肝を抜かれました。伝統ある南部鉄器にこんなポップで可愛らしい色合いのものが存在するなんて!

(注:以前の作品ですので現在は販売されていません。)

しかし意外過ぎる色合いでありながらも、品格は少しも損なわれていませんでした。あまりの感動で他のアイテムもチェックしてみると、出るわ出るわ素敵なデザインばかりです!斬新なものはあっても奇をてらった印象のものは皆無でした。伝統を大切にし、品を保ちながらも遊び心を取り入れる。これが及富スタイルだと感じました。

また、新元号令和に因んで作られた「令和」も圧巻の美しさです。白色の急須で、本体はあられ模様。蓋と鍋敷きには梅の花びらの模様があしらわれています。新しい時代の幕開けに相応しい、凛とした品格のある佇まいですね。

調べれば調べる程、及富の製品は奥深いです。一つ一つの製品に物語があり、紹介しきれない程です。是非及富のホームページにアクセスしてご覧いただきたいです。実際の製品を手にとってご覧になる機会があると尚良いかと思います。私自身、いつか岩手県に赴き、工房に伺うのが目下の夢の一つになりました。


実は南部鉄器は直火のみ対応だと思い込んでいたのですが、実際はIHにも対応可能なんだそうです。これは本当に意外でした!(ただし鉄瓶の変形を防ぐ為、弱火から中火推奨との事です。)囲炉裏の直火にかけるのが本来の姿でしょうが、現実はガスコンロもしくはIHがほとんどですよね。囲炉裏導入は中々難しい事ですが、それでも鉄瓶でお湯を沸かす事で何とも豊かな気持ちになれそうです。

火にかけない急須タイプもありますので、ご自身のライフスタイルや用途に合わせて選べます。急須は内側がホーロー加工されていますので、保温性に優れています。ただし、鉄分補給は期待できませんので、その場合は鉄玉を中に入れて使用すると良いですね。勿論鉄瓶と併用も最高です。

電気ケトルは大変便利ですし、それを否定する気持ちは毛頭ありません。ですが美しい南部鉄器を使用する事によって日々の時間や気持ちが贅沢なものになるのは間違いなさそうです。


現在、海外からのオファーも少なくないそうです。そして海外向けに販売したいという引き合いも多いのだとか。以前食事をしたイタリアンレストランでオープンキッチンに南部鉄器をディスプレイしていた事を思い出しました。西洋風のインテリアに南部鉄器が馴染んでいて、とても素敵だと思ったのを覚えています。日本の伝統文化が海外でも愛されるのは本当に嬉しい事です。

及富では新しいデザインも取り入れつつ、昔の製品の復刻版が発売されたりもしています。今後の展開にも大いに期待したいです。それでは、また。

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