バナナがもたらす新しい価値観とエシカルな消費

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バナナがもたらす新しい価値観とエシカルな消費

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published : 2022/1/10

身近な果物であるバナナが大きな環境問題を引き起こしていました。その問題解決の為に進められている取り組みをご紹介します。廃棄されていたものを再利用し新たな価値を生み、更にその過程において新たな雇用を生む。ここに持続可能な社会へのヒントが隠されていそうです。


バナナがもたらす新しい価値観とエシカルな消費

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こんにちは、work and placeです。2022年に入り、SDGsやカーボンニュートラル等の環境問題への意識は更に加速している様に感じます。以前フードロスの問題について書きましたが、今回はそれに付随する問題です。日本の食生活において身近な存在である果物のバナナについて、収穫後に起きる環境問題とその解決策の実例をご紹介します。

バナナは多年草の一種で、一度実を収穫するとそのままではもう実を付けません。収穫後そのまま次のシーズンにまた実を付ける植物と異なり、バナナは収穫後に茎の根元数10㎝を残して伐採されます。残った部分に新芽が芽吹き次のバナナが育つのですが、その伐採された部分は全て廃棄処分となっていました。その量は何と年間約10億tに及びます。バナナは他の植物に比べ、廃棄部分が圧倒的に多いのが特徴です。廃棄された茎や葉は、ほとんどが焼却処分されています。年間10億tもの茎を焼却するとなると、CO2の発生量も相当なものとなります。かと言って焼却せずに放置をすれば土壌汚染に繋がる為、長年の環境問題となっていました。

その問題を解決するべく、伐採されたバナナの茎の活用法が考えられてきました。長年の研究が実を結び、ここ数年バナナの茎を繊維化したり紙化する技術が注目されています。

バナナ繊維を実用化している例はいくつかありますが、まずご紹介するのはバナナクロスについてです。バナナの茎の繊維はとても短く、そのままでは糸として使用する事が出来ませんでした。しかし綿とブレンドする事によって糸化する事に成功したのです。バナナ繊維はリネンに似ていて、サラッとした肌触りが特徴です。こうして完成したバナナクロスは2022年の春夏辺りから一般にも流通する予定だそうです。楽しみですね。

帆布、デニム、裏起毛のスウェット生地など、汎用性が高いバナナクロスは第5の天然素材として今後も大いに期待できそうです。減少しつつある天然繊維の供給にサステナブルなバナナ繊維が一役買うのは、地球の未来にとっても明るい材料だと思います。

昨今はファストファッションブランドもSDGsや環境問題に敏感です。昨年、人気のファストファッションブランドのH&Mでバナナの茎を利用したスニーカーが限定販売されました。SNSで話題を集め、あっという間に在庫切れになったそうです。H&Mでは自社ブランド以外の衣類も無料で回収し、リサイクルする活動も続けています。大量生産大量廃棄が世界的にも問題になっている中、アパレル業界が自主的に問題解決に乗り出すのは大切な事ですね。


次にご紹介するのはバナナペーパーです。バナナペーパー作りに関わる国はいくつかありますが、今回ご紹介するのはカンボジア発のバナナ由来の紙です。バナナ繊維は吸水性が高く、紙に加工しても濡れると破れやすいのが難点でした。そこで試行錯誤の末、バナナの繊維にリサイクルのプラスティックを混ぜて紙状にする事に成功しました。これによって強度と耐水性が大幅にアップしたそうです。紙なのに濡れても破れず耐久性も高いので、バナナペーパーを使ったお財布が作られ、大変人気なんだそうです。

紙製のお財布?!とビックリしましたが、強度もかなりのもので安心して使用できるレベルなんだそうです。愛用者の多くが実用性についても高く評価しています。

今回ご紹介したのはお財布ですが、バナナペーパー自体が世界中に広がっています。どこか暖かみを感じられるバナナペーパーはとても人気で、文房具や雑貨、ショッピングバッグに使用したりと多方面で製品化されています。オリジナルの名刺を作る際、素材にバナナペーパーを選べるサービスもあるんだそうです。名刺交換後の会話も弾みそうですね!


バナナクロス、バナナペーパーどちらも技術的に大変素晴らしいと思います。そして本来廃棄するはずのものから商品を生む事と、環境汚染を減少させる事、現地での雇用創出、これらを同時に叶えている事に更なる大きな価値があります。こういった試みが増えれば発展途上国の環境問題や貧困問題解消もどんどん現実的なものになりますね。

大量生産大量消費を良しとする考えは時代遅れと言わざるを得ません。地球環境だけではなく、社会や人そして地域にも配慮したエシカルな消費への関心がどんどん高まっています。エシカル消費という新しい価値観は決して綺麗事などではなく、消費者が商品や企業を選択する際の重要な指標の一つになっている事は間違いありません。

バナナの廃棄物を使った新しい試みは、循環型社会を実現させる一つの大きな実例と言えそうです。今後の展開にも期待したいと思います。それでは、また。

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