Z世代が牽引するアナログ回帰。五感で楽しむ音楽スタイルとは?

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Z世代が牽引するアナログ回帰。五感で楽しむ音楽スタイルとは?

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published : 2022/1/16

音楽視聴においてサブスクのストリーミング配信が一強かと思いきや、真逆のアナログレコードが大人気です。Z世代が求める五感で楽しむ新しくて懐かしい音楽スタイルとは?


Z世代が牽引するアナログ回帰。五感で楽しむ音楽スタイルとは?

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サブスクリプションサービス、通称サブスクの広がりによって『所有しない』という価値観がメジャーになって久しいです。特に音楽業界においてはCDを買う事なく、サブスクのストリーミング配信を利用する事が新しいスタンダードになってきている印象です。

その反面、実はアナログレコードの売り上げが右肩上がりな事をご存知ですか?アナログレコードの生産数自体がここ10年程で急激に伸びているのです。サブスクの音楽配信に代替された形で売り上げを落としているCDと何が違うのでしょうか?レコード売上は新品中古共に人気です。

日本でのレコード売上は2010年頃は年間1億7000万円台まで落ち込みましたが、その後順調に回復を続けており、2018年以降は毎年20億円台をキープしています。この傾向は日本に限った事ではありません。世界的に見ても、ここ10数年間レコード売上高は前年比プラスとなっています。

日本においては70~80年代のシティポップが特に人気なんだそうです。当時のファンによる懐古主義的なムーブメントかと思いきや、その人気を牽引しているのは意外にも10代~20代のZ世代だと言うので驚きます。サブスクの動画や音楽配信サービスを最も活用していると考えられる世代が、同時にアナログレコードにも惹かれている事象は興味深いですね。

更にZ世代に愛されているのはアナログレコードだけではありません。クラシカルな純喫茶やレトロなファッション等、色々な分野でのレトロブームを牽引しているのもこれまたZ世代なのです。昨年ブログでご紹介した大正浪漫のお洋服で街を散策できる大正洋装店もZ世代のお客様が多いんだとか。昭和ポップス人気が再燃しているのも、このレトロブームの一環の様です。

デジタルネイティヴであるからこそ、アナログ感に惹かれているのかもしれません。懐かしさではなく、新鮮さをそこに見出しています。所有しない事を良しとするサブスクと相反する形ですが、レコード人気は所有感こそがポイントになっています。外出中はストリーミングサービスを利用して便利さや快適さを享受し、自宅ではレコードに針を落とす動作の手間を含めて、耳だけではなく五感で音楽を楽しむというように、使いわけをしているようです。音楽の消費の仕方も多様化しています。

しかもアナログ回帰の後押しをしているのは、デジタル分野の進化というのが面白いところです。デジタルネイティヴであるZ世代はTikTok等のSNSを通じて知った楽曲を、レコードで購入する傾向が強いそうです。発信するアーティスト側もアナログ回帰していて、新曲や新しいアルバムをリリースする際に、数量限定でレコードを販売したりしています。となると、コレクションとして欲しくなるのがファン心理というものですね。


『所有しないこと』に慣れきったZ世代に『所有欲』をかきたてるアナログレコードは音楽の分野を超え、インテリアやファッションの感覚としても評価されています。レコードジャケット自体がアート作品であるという考え方が再燃しています。中にはレコードプレーヤーは持たず、おしゃれなインテリアとして室内に飾る人も少なくないんだとか。

ネットで購入したり、フリマサイトを利用してレコードを購入する人も多いですが、レコード専門店自体も増えてきています。そして、レコードのプレーヤーが意外と安価で手に入る事も人気に拍車をかけています。実際に音楽を楽しむ方が多いと思いますが、中にはインテリアの一部としてレコードプレーヤーを購入する人もいます。

そして楽曲自体も再評価されています。SNSを通じて70~80年代楽曲を知り、メロディラインの質が高い事や、ストレートな歌詞が新鮮だとハマる人が多い様です。時代が変わっても良いものは良いという事なんでしょう。先日立ち寄ったカフェでも80年代の楽曲を色々なアーティストがカバーしたアルバムがBGMとして流れていました。Z世代にとっては歌詞に英語のフレーズが入っていると、昔っぽいという感覚があるそうですが、気を付けて聴いてみると確かに英語が多かったですね。


所謂『アナログ』や『懐メロ』に惹かれるZ世代について書いてきましたが、X世代を中心とした昔からの音楽ファンも根強いんだそうです。現在は解散しているアーティストの当時のファン有志が集まってお金を出し合い、ラジオの番組枠を購入したケースがあります。数年前にそのアーティストの復刻版アルバムが限定受注生産のみで発売されたのですが、すぐに完売してしまったそうです。そしてそのアルバムを買えなかったファン達と共有したいという想いから、購入したラジオの番組枠でそのアルバムを流すという企画が実現したそうです。

とあるレコードショップが聖地化し、昭和のファン同士が令和のSNSで繫がるという現象も起きています。SNS全盛なのはZ世代に限った事ではありません。デジタル技術の進歩はアナログな文化とはかけ離れているようでいて、実は親和性が高いと言えるのかもしれません。

80年代の楽曲の完成度の高さに注目している人も多く、寧ろ時代がやっと追いついてきたと表現する人もいます。アナログレコードに限らず、音楽の楽しみ方自体もどんどん多様化していますね。私も近々レコードショップに足を運んでみようと思います。皆様も久しぶりにレコード鑑賞されてはいかがでしょうか?それでは、また。

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