気候変動問題解決の切り札?!炭素クレジットが持つ可能性

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気候変動問題解決の切り札?!炭素クレジットが持つ可能性

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published : 2022/2/8

地球規模の課題であるカーボンニュートラル。その実現に一役買いそうな炭素クレジットが注目されています。遊休地を活用する事で、農業が成長ビジネス化するかもしれません。


気候変動問題解決の切り札?!炭素クレジットが持つ可能性

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こんにちは、work and placeです。

今回は環境問題とビジネスのお話です。長年の環境破壊による気候変動問題は地球規模での課題となっています。日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。”排出を全体としてゼロにする“というのはCO2排出そのものをゼロにするという事ではありません。排出量は極力下げ、且つ植物や森林管理による吸収量を上げ、その相殺によって実質排出量ゼロにするという意味です。

世界においても120以上の国と地域が2050年までのカーボンニュートラルを目指しています。日本に限らず、排出量そのものをゼロにするというのは現代社会においてあまり現実的とは言えません。そこで今注目されているのがグリーンカーボンやブルーカーボンの存在です。

グリーンカーボンとは光合成によって植物や土の中に蓄積されている炭素の事です。そしてブルーカーボンは主に海で海藻やプランクトン、海洋生物、更には海以外でもマングローブ林や藻場等へ蓄積される炭素の事です。ブルーカーボンについてはまた別の機会に書きたいと思いますが、今回はグリーンカーボンの活用や炭素クレジットを中心に書いていきたいと思います。

アメリカでは炭素クレジットの市場が急拡大しています。炭素クレジットとは森林や田畑での活動によって削減したCO2をクレジット化し、企業や自治体が購入できる仕組みです。環境問題の中でも気候変動対策として、温室効果ガスの削減は待ったなしの状況です。特に大手企業に対しては、社会全体が厳しい目を向けています。そこで、企業は自社の排出量そのものをゼロにできない代わりに、炭素クレジットを購入する事で、削減分に充当するというわけです。

排出量を実質ゼロにする事を目指す企業にとって、炭素クレジットの存在は必要不可欠であり、需要が高まっています。この炭素クレジットというビジネスに、マイクロソフト社が積極的に参入した事で注目を集めてます。自社での排出量削減の取り組みを前提としつつ、炭素クレジットを活用する事によって、2030年には排出量を実質マイナス(カーボンネガティブ)にする事を目標としています。

特筆すべきは、自社で炭素クレジットを購入するだけではなく、炭素クレジットを販売する側にも巨額の出資をしている事です。例えば、大気中からCO2を直接回収する設備開発をしている企業や森林・農業ビジネスに取り組む企業等に対し、積極的に出資を行っています。

CO2を取り除く技術は世界中から必要とされていますが、開発そのものに莫大なコストがかかります。マイクロソフトの様に大きな資金力を持つ企業が率先して取り組む事で、炭素クレジットの市場が安定的に成長する助けになりますし、カーボンニュートラルに対する社会的な機運が更に高まるきっかけともなります。

日本においても炭素クレジットのビジネスがじわじわと広がっています。J-クレジットという制度があります。これはグリーンカーボンに限らず、省エネ機器や再生可能エネルギーの導入等で削減できたCO2の量をクレジットとして認証してもらえる制度です。正直言って、日本はそれ程国土が広い訳でありませんし、既に国土の約7割が森林です。ですから新たに植林できる余地はそれ程大きくは無いでしょう。ですが遊休地が意外と多いのも事実です。使われていない農地や里山を活用する事で、衰退しつつある農業が成長ビジネスに変わる可能性があります。勿論、地方の農地活用だけに頼るのではなく、都心の緑化事業等も積極的に行いたいところです。


画期的な制度ではあるものの、炭素クレジット購入自体でCO2排出量が減少する訳ではありません。これはあくまで苦肉の策であり、排出量そのものを削減する取り組みも忘れてはいけません。近年の気候変動による災害の多発を考えると、緊急性は相当高いと言えます。

CO2排出量を削減できるような社会の取り組みと併せて、炭素クレジットの市場を安定させ、CO2を回収する技術も高めていく。環境問題を解決しながら経済活動も推進できれば最高ですね。グリーンカーボン、炭素クレジットの今後に注目したいと思います。それでは、また。

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